日常にある仏教用語

■愛嬌
【意味】にこやかで、かわいらしいこと。ひょうきんで、憎めない表情・しぐさ。
【由来】仏様の顔だちがおだやかで恵み深いことを表し、だれからも愛され敬われる顔や表情にいったもの。「あいきょう」と清音で読むようになったのは江戸時代に入ってからで、本来は「愛敬」と書いて「あいぎょう」と読んでいた。
■挨拶
【意味】人に会ったときや別れるときなどに取り交わす礼にかなった動作や言葉。会合や集会で、祝意や謝意などを述べること。または、その言葉。
【由来】「挨」は「強く背中を打って後ろから押しのける」という意味。「拶」は「大勢が押し合って進む」という事。つまり、「あいさつ」は「大勢の人を押し分けて前に進む事」。それが禅宗の問答で門下の僧の悟りの深さを試す言葉として使われるようになり、やがて「相手の様子をうかがう」という現在のような意味になった。
■アバター
【意味】ウェブサービス上に用意された仮想空間で、自分の分身として顔、髪型、服装、装飾品などを選択して作成できるオリジナルキャラクター
【由来】英語「avater」の元は「この世に現れた神仏の化身」「思想などの体現者」を意味するサンスクリット語「アヴァターラ」。
■安心
【意味】心配がなくなって、心が落ち着くこと。
【由来】仏教では「あんじん」と読み、仏法によって得た深い心の安らぎや、動ずることのない確かな境地に達することをいう。恐ろしさから逃れ、迷いを断つことができれば、心の安らぎを得て主体性を確立できるという意味。
■有頂天
【意味】喜びで舞い上がること。ひとつのことに夢中になり、うわの空になること。
【由来】仏教語「天の中の最上にある天」を意味するサンスクリット語の漢訳。ここから「天の最上にある天に登りつめる」「絶頂を極める」の意に転じ、近世になって現在の意に転じた。
■ウロウロ
【意味】目的もなく歩きまわるさま。どうしたらよいかわからずに困りはてているさま。
【由来】「おろおろ」の母音交替形で、本来は目の焦点が定まらないなど、混乱した様子を広くさす語だった。「おろおろ」は、「愚(おろ)か」や「疎(おろそ)か」の「おろ」を重ねたもので、不明瞭・不十分なさまをいうのが原義。そこから、中世以降、不安でおどおどするさまを示すようになった。
■縁日
【意味】神や仏が衆生(しゅじょう)と縁を結ぶ日のこと。祭り(露店などが多く出る)の日の意味として使われることも多い。
【由来】「有縁(うえん)の日」「結縁(けちえん)の日」の略語で、仏教語。この日に参詣?(さんけい)?すれば、特に御利益があると信じられている。この”縁日”にお祭りが開かれ、そこに露店などが出る事が多いため、祭りや露店のことを「縁日」と呼ぶようになった。
■億劫
【意味】面倒くさくて気の進まないこと。
【由来】「劫」は極めて長い時間の単位で、「億劫」はその1億倍、すなわち、気の遠くなるような長い時間を意味する。長時間かかわることはわずらわしく、やる気がでなくなることから、たとえていうようになった。
■ガタピシ
【意味】立て付けの悪い引き戸を開け閉めするときの音を表現した言葉。
【由来】自分と他者とを区別するという意味の「我他彼此(がたひし)」が由来。無我の境地を理想とする仏教では、このように「我」と「他」、「彼」と「此」を区別する考えは、対立抗争を生む元凶として、信仰や修行により克服されるべきものとされる。そこから、自他の関係がうまくいかずぎくしゃくする様子や対立して騒がしいありさまを「がたひし」「ガタピシ」というようになったもの。「がたがた」「がたがくる」などもここから来ている。
■愚痴
【意味】言っても仕方がないことをくどくどと言って嘆くこと。また、その言葉。
【由来】本来は仏教語で、心理を理解する心がないことをいう。「愚」も「痴」も心理に暗い、おろかという意味。江戸時代になって、愚かなことを口にするという用法になり、さらに、江戸時代中期ごろからは現在と同様の意味に変化した。
■玄関
【意味】建物の正面の入り口のこと。
【由来】本来は仏教語で、「玄」とは深遠な悟りの境地をいい、道理・真理の意。
そこから、「玄関」は玄妙な道に入る関門を意味し、奥深い教えに入る糸口のことをいった。転じて、禅寺の方丈に入る門をいう。
この形式は室町時代に興り、桃山時代に完成した書院造に取り入れられ、江戸時代になって庶民の住宅や一般の建物にも用いられるようになった。
■ゴタゴタ
【意味】秩序なく種々のものが入り混ったさま。ごちゃごちゃ。
【由来】鎌倉時代、宋から招かれた禅僧・兀庵普寧(ごったんふねい)が語源。 兀庵は素晴らしい僧ではあったものの、理屈っぽい性格が珠に傷。彼の話は複雑に入り混じったようになって分かりにくく、あまり評判はよくありませんでした。そんなところから、こんがらかることを「兀庵兀庵(ごったんごったん)する」というようになったそうです。
■食堂
【意味】食事をする部屋。転じて、いろいろの料理を提供する店。
【由来】仏教の寺院には「七堂伽藍」と称される7つの建物がある。塔 (とう)、講堂 (こうどう)、金堂 (こんどう)(本堂のこと)、経蔵(きょうぞう)僧房(そうぼう)、鐘楼(しょうろう)そして、僧侶が食事をする寺のお堂のことを「食堂(じきどう)」と呼ぶ。食事をすることも修行であるから、お堂の「堂」がつく。
■畜生
【意味】他人をののしって言う語。強く憎んだりうらやんだりした時に言う語。
【由来】元は仏教において神や人間以外に生まれた生物のこと。六道の一つ(畜生界)。転じて動物のような生き方をする人に対する呼称となり、さらに転じて罵倒したり自分の失敗や敗北を悔んだりする言葉に変化した。
■どっこいしょ
【意味】力を入れるときの掛け声。
【由来】山登りの掛け声「六根清浄 お山は晴天」が省略されたもの。六根とは目・耳・鼻・舌・身・意の六つの器官。古来山は神聖なものとして、心身共に清浄にしてお参りする為の掛け声。
■バカ
【意味】相手を(愚かである、智恵が足りないなどと)侮蔑する言葉。
【由来】サンスクリット語で無知、迷妄などを意味する「moha」が「募何(ぼか)」となった。「馬鹿」は当て字といわれている。
■未曾有
【意味】今までに一度もなかったこと。また、非常に珍しいこと。
【由来】びっくりしたという意味のサンスクリット語「adbhuta」を漢訳した仏教用語。「未だ曾て有らず(いまだかつてあらず)」と訓読され、いまだかつてないほど・素晴らしいなどの意味で用いられていた。
「未曾有の惨事」のように悪い意味で用いることが多いが、本来はすばらしいこと、めでたいことを形容する言葉。
■もったいない
【意味】有用なのにそのままにしておいたり、むだにしてしまったりするのが惜しい。また、身に過ぎておそれ多いこと。
【由来】「もったい」は「勿体」と書き、物のあるべき姿の意の漢語「物体(もったい)」に基づく和製漢語。それに「ない」がついて、あるべきさまを外れていて不都合である、もってのほかというのが、本来の意味。それが転じて、自分にとっては身に過ぎる、また、物事の価値が十分に生かされていなくて惜しい意味となった。
 室町時代から用いられ、のちに、「勿体」はありさまや態度がいかにも物々しい意で、「勿体をつける」「勿体ぶる」のようにも用いられるようになった。
■油断
【意味】たかをくくって注意を怠ること。
【由来】仏教の経典「涅槃経」のなかに、「ある王様が一人の家臣に油の入った鉢を持たせ『一滴でもこぼしたらお前の命を絶つぞ』と申しつけて、うしろに刀を抜いた監視人を置いた。そこで家臣は細心の注意をはらって鉢をささげていた」という話があり、ここからできた語といわれます。